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水いぼのピンセット除去、その治療法と受診すべき科
子どもの体に、光沢のある、中央が少しへこんだ小さなブツブツができる「水いぼ」。その正式名称は「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」といい、ウイルス感染によって引き起こされる皮膚の病気です。この水いぼの治療法として、古くから行われ、現在でも最も確実で即効性のある方法の一つが、「ピンセットによる除去」です。この治療法は、専用の先の丸い特殊なピンセット(鑷子・せっし)を用いて、水いぼの一つ一つを物理的につまみ、中に含まれているウイルスのかたまり(軟属腫小体)を取り除くという、非常に直接的なアプローチです。なぜ、このような物理的な方法が選ばれるのでしょうか。それは、水いぼがウイルス性のイボであり、その芯となっているウイルス塊を完全に取り除いてしまえば、その部分の水いぼは確実に治癒するからです。塗り薬などの効果が現れるまでに時間がかかる治療法と比べて、処置したその場で原因を取り除けるという、即時性と確実性が、この治療法の最大のメリットと言えます。処置は、主に「皮膚科」または「小児科」で行われます。皮膚科は皮膚疾患の専門家であり、正確な診断と、より専門的な手技が期待できます。一方、かかりつけの小児科でも、日常的によく見られる疾患であるため、多くの医師がピンセットによる除去に対応しています。どちらの科を受診するかは、かかりつけ医との信頼関係や、麻酔テープの使用方針などを考慮して選ぶと良いでしょう。水いぼは、放置しても自然に治ることが多いですが、それまでには半年から数年かかることもあり、その間に掻き壊して自家接種で増えたり、他の子にうつしてしまったりするリスクがあります。特に、保育園やスイミングスクールなどで、除去を求められるケースも少なくありません。ピンセットによる除去は、痛みを伴うという大きなデメリットがありますが、それを乗り越えるための工夫も進んでいます。
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ピンセット以外の選択肢、水いぼの様々な治療法
水いぼの治療法として、ピンセットによる除去は確実性が高い一方で、痛みを伴うため、子どもへの負担を考えて、他の治療法を選択したいと考える保護者の方も多いでしょう。幸い、水いぼの治療には、ピンセット以外にもいくつかの選択肢があり、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、子どもの年齢や性格、水いぼの数や場所、そして生活環境(スイミングに通っているかなど)を考慮して、医師と相談しながら最適な方法を選ぶことが大切です。まず、最も穏やかな選択肢が「自然治癒を待つ」という方法です。水いぼは、ウイルスに対する免疫が獲得されれば、治療をしなくても、いずれは自然に治癒します。その期間は、個人差が大きく、短い場合で半年、長い場合は2~3年かかることもあります。痛みを伴う処置を一切しなくてよいというのが最大のメリットですが、治るまでの間に、掻き壊して数が増えたり、他の子にうつしてしまったりするリスクがあるというデメリットがあります。次に、イボの治療で一般的に行われる「液体窒素療法」です。これは、マイナス196度の超低温の液体窒素を、綿棒などで水いぼに当てて、ウイルスに感染した細胞を凍結させて壊死させる治療法です。ピンセットほどの強い痛みはありませんが、ピリピリとした、あるいは焼けるような独特の痛みを伴います。一度では治りきらないことが多く、1~2週間おきに、数回の通院が必要となります。また、処置後に、色素沈着(シミ)や、逆に色素が抜けて白くなる(色素脱失)が残ることがあるのが難点です。その他にも、いくつかの治療法があります。角質を柔らかくする作用のある「サリチル酸絆創膏(スピール膏)」を小さく切って貼り、水いぼをふやかして除去しやすくする方法や、硝酸銀を塗って、水いぼの組織を化学的に腐食させる「硝酸銀ペースト法」などがあります。また、体の免疫力を高めることで、ウイルスの排除を促すことを期待して、「ヨクイニン(ハトムギのエキス)」の内服薬が処方されることもありますが、その効果は穏やかで、個人差が大きいとされています。どの治療法が最適かは、一概には言えません。それぞれの特徴をよく理解し、医師と十分に話し合って、親子で納得のいく治療法を選択することが重要です。
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ピンセット除去後の正しいアフターケア、再発を防ぐために
医療機関で、水いぼをピンセットで除去してもらった後、治療はそれで終わりではありません。処置後の適切なアフターケアを行うことが、傷をきれいに治し、感染を防ぎ、そして何よりも再発を最小限に抑えるために非常に重要です。医師や看護師から具体的な指示がありますが、家庭でできるケアの基本を理解しておきましょう。まず、処置直後のケアです。水いぼを取った後は、点状の小さな出血が見られます。通常は、医療機関で圧迫止血を行い、小さな絆創膏やガーゼで保護してくれます。出血が滲んでくることもありますが、ほとんどは数分で自然に止まります。帰宅後も、出血が続くようなら、清潔なガーゼで再度数分間、優しく圧迫してください。次に、「入浴」についてです。処置当日の入浴は、医師の指示に従うのが基本ですが、一般的には、シャワー浴であれば問題ないとされることが多いです。ただし、湯船に長く浸かると、傷口がふやけて、細菌が侵入しやすくなる可能性があるため、処置当日は避けるか、短時間で済ませるのが無難です。体を洗う際は、傷口をゴシゴシこすらず、石鹸をよく泡立てて、優しくなでるように洗い、シャワーで十分に洗い流してください。入浴後は、清潔なタオルで、そっと押さえるように水分を拭き取ります。そして、「傷口の保護」です。処置後、数日間は、傷口から浸出液が出たり、細菌感染を起こしたりするのを防ぐために、絆創膏やガーゼで保護します。毎日、お風呂上がりに新しいものに貼り替え、傷口が乾き、かさぶたになるまで続けましょう。もし、傷の周りが赤く腫れてきたり、痛みが強くなったり、膿が出たりした場合は、感染を起こしている可能性があるため、速やかに処置を受けた医療機関を再受診してください。最後に、最も重要なのが「再発予防のためのスキンケア」です。水いぼウイルスは、乾燥してバリア機能が低下した皮膚に感染しやすいという特徴があります。したがって、水いぼができていた周辺だけでなく、全身の皮膚を、保湿剤(ヘパリン類似物質やワセリンなど)で、毎日しっかりと保湿することが、新たな水いぼの発生を防ぐための、最も効果的な予防策となります。掻き壊しを防ぐため、爪を短く切っておくことも大切です。
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糖尿病の検査、何科を受診すればよいのか
健康診断で「血糖値が高め」「尿糖が出ています」と指摘された、あるいは、最近になって「異常に喉が渇く」「トイレが近い」「急に体重が減った」といった、気になる症状がある。このような時、「もしかして糖尿病かもしれない」と不安に思い、専門的な検査を受けることを考えるでしょう。その際、多くの人が最初に直面するのが、「一体、何科を受診すればよいのだろう?」という疑問です。結論から言うと、糖尿病の診断と治療を専門的に行う診療科は、「糖尿病内科」「内分泌内科」、あるいは「代謝内科」です。これらの科は、糖尿病の原因であるインスリンというホルモンの異常や、糖代謝のメカニズムを専門的に扱うエキスパートです。しかし、全ての病院にこれらの専門科が設置されているわけではありません。そのような場合は、まず、最も身近な医療の窓口である「一般内科」を受診することで、全く問題ありません。内科医は、糖尿病を含む、幅広い内科系疾患の初期診断と治療を行うことができます。健康診断の結果や、自覚症状を伝えれば、内科で基本的な血液検査や尿検査を行い、糖尿病の診断基準に照らし合わせて、糖尿病であるか、あるいはその一歩手前の予備群(境界型)であるかを判断してくれます。そして、診断が確定した後の治療方針も、かかりつけの内科医と相談しながら進めていくことが可能です。ただし、血糖値が非常に高い場合や、すでに合併症が進行している可能性がある場合、あるいはインスリン注射の導入が必要となるようなケースでは、内科医から、より専門的な治療が可能な糖尿病専門医のいる病院やクリニックへ、紹介されることもあります。まずは、一人で不安を抱え込まず、健康診断の結果票を持って、近隣の内科、あるいは専門科の扉を叩くこと。それが、糖尿病の早期発見と、適切な管理への最も重要な第一歩となるのです。
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糖尿病予備群(境界型)と診断されたら何科へ?
健康診断などで、「糖尿病予備群(境界型糖尿病)」あるいは、「耐糖能異常」と指摘された。これは、血糖値やヘモグロビンA1cの値が、正常ではないものの、まだ糖尿病と診断されるほどの高さには至っていない、「黄色信号」の状態です。この段階では、多くの場合、自覚症状は全くありません。そのため、「まだ病気じゃないなら大丈夫だろう」と、つい放置してしまいがちですが、それは非常に危険な考え方です。糖尿病予備群は、将来的に本格的な糖尿病へと移行するリスクが極めて高い状態であると同時に、この段階からすでに、動脈硬化が静かに進行し始めていることが分かっています。したがって、この「黄色信号」の時点で、いかに適切な対策を講じるかが、その後の健康寿命を大きく左右する、極めて重要な分岐点となるのです。では、糖尿病予備群と診断されたら、何科を受診すればよいのでしょうか。この場合も、基本的には、かかりつけの「内科」で十分な対応が可能です。内科医は、あなたの検査データと、現在の生活習慣(食事、運動、喫煙、飲酒など)を総合的に評価し、本格的な糖尿病への移行を防ぐための、具体的なアドバイスをしてくれます。予備群の段階での治療の基本は、薬物療法ではなく、「食事療法」と「運動療法」です。医師や、病院に在籍する管理栄養士、理学療法士といった専門家の指導のもと、自分に合った、継続可能な生活習慣の改善プランを立てていきます。例えば、食事では、総カロリーの適正化や、栄養バランスの見直し、食べる順番の工夫(野菜から先に食べるベジファーストなど)が指導されます。運動では、ウォーキングやジョギングといった有酸素運動を、無理のない範囲で、週に3~5日程度行うことが推奨されます。定期的に内科を受診し、数ヶ月ごとに血液検査で血糖値やHbA1cの推移をチェックしてもらうことで、自分の努力の成果が目に見え、モチベーションの維持にも繋がります。もちろん、より専門的な指導を受けたい場合や、他の生活習慣病も合併している場合には、「糖尿病内科」や「内分泌内科」を受診するのも良い選択です。予備群の段階での介入は、いわば未来の健康への投資です。指摘を受けたら、先延ばしにせず、ぜひ医療機関の扉を叩いてください。
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解熱しない時の受診の目安と何科に行くべきか
マイコプラズマ感染症の治療中に、熱がなかなか下がらない時、あるいは一度下がった熱がぶり返してきた時、保護者としては、どのタイミングで、どの診療科を再受診すればよいか、判断に迷うことがあるでしょう。ここでは、具体的な受診の目安と、適切な診療科について解説します。まず、受診すべき診療科は、最初に診断を受けた、かかりつけの「小児科」または「内科」で問題ありません。これまでの治療経過を把握している主治医に、再度診てもらうのが、最もスムーズです。もし、咳や息苦しさといった呼吸器症状が特に強い場合は、「呼吸器内科」の受診も良い選択肢です。次に、再受診を検討すべき「タイミング」です。以下の目安を参考にしてください。①抗生物質を飲み始めてから、48~72時間経っても、38.5度以上の高熱が続く場合。これは、処方された薬が効いていない、すなわち「薬剤耐性菌」の可能性を強く示唆します。治療薬の変更を検討する必要があるため、速やかな再受診が必要です。②一度解熱した後に、再び38度以上の熱が出てきた場合(熱のぶり返し)。前述の通り、細菌感染の合併など、新たな問題が起きているサインかもしれません。③呼吸状態が悪化してきた場合。これが最も重要なサインです。「咳がひどくなり、眠れない」「息が苦しそう、肩で息をしている」「息を吸う時に、胸や鎖骨の上がペコペコとへこむ(陥没呼吸)」「顔色が悪く、唇が紫色っぽい(チアノーゼ)」。これらの症状は、肺炎が重症化し、呼吸困難に陥っている危険な兆候です。夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診してください。④水分がほとんど摂れず、ぐったりしている場合。高熱と咳は、体力を著しく消耗し、脱水症状を引き起こしやすくします。「半日以上おしっこが出ていない」「口の中が乾いている」「泣いても涙が出ない」といった脱水のサインが見られたら、点滴による水分補給が必要なため、受診が必要です。⑤咳以外の、強い症状が現れた場合。「激しい頭痛や嘔吐を繰り返す(髄膜炎の疑い)」「胸の痛みを訴える(心筋炎や胸膜炎の疑い)」「耳をひどく痛がる(中耳炎の疑い)」。これらの症状は、重篤な合併症の可能性を示します。熱が下がらないという事実は、治療が順調に進んでいないことの現れです。
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マイコプラズマで熱が下がらない、その深刻な理由
しつこい咳と発熱を特徴とするマイコプラズマ感染症。多くの場合、適切な治療を開始すれば、数日のうちに解熱し、回復に向かいます。しかし、中には「処方された薬を飲んでいるのに、一向に熱が下がらない」「一度は下がった熱が、またぶり返してきた」といった、厄介なケースに遭遇することがあります。なぜ、マイコプラズマで熱が下がらないという事態が起こるのでしょうか。その背景には、主に二つの深刻な理由が考えられます。第一の、そして最も大きな理由が、「薬剤耐性菌」の存在です。マイコプラズマの治療には、従来、「マクロライド系」と呼ばれる系統の抗生物質が、特に子どもに対して、第一選択薬として広く用いられてきました。しかし近年、このマクロライド系抗生物質が効かない、あるいは効きにくい性質を持った「耐性マイコプラズマ」が、日本を含む東アジアで急速に増加し、大きな問題となっています。この耐性菌に感染してしまった場合、マクロライド系の薬を服用しても、体内の菌を十分に叩くことができず、炎症が続いてしまうため、熱がなかなか下がらないのです。第二の理由は、「合併症の発症」です。マイコプラズマは、主に気道に感染する病原体ですが、時に、気管支炎や肺炎といった呼吸器系の合併症を重症化させたり、あるいは、呼吸器以外の中耳炎や副鼻腔炎、さらには稀ですが、心筋炎や脳炎といった、より重篤な全身性の合併症を引き起こしたりすることがあります。このような合併症を発症した場合、もともとのマイコプラズマ感染症に加えて、新たな炎症が体のどこかで起きているため、発熱が長引く原因となります。熱が下がらないという症状は、単に治りが遅いというだけでなく、治療法を見直す必要がある、あるいは、体に新たな問題が起きている可能性を示唆する、重要なサインなのです。安易に様子を見続けるのではなく、その原因を突き止めるために、速やかに再受診することが、重症化を防ぐための鍵となります。
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水疱瘡と帯状疱疹の不思議な関係
水疱瘡は、一度かかると、基本的には二度とかからない病気です。しかし、実は、水疱瘡の原因である「水痘・帯状疱疹ウイルス」は、水疱瘡が治った後も、体内から完全に消え去るわけではありません。ウイルスは、私たちの体の、脊髄から出る神経の根元にある「神経節」という場所に、静かに、そして生涯にわたって潜伏し続けるのです。そして、数十年後、私たちが加齢や、疲労、ストレス、あるいは他の病気などで、免疫力が低下した時に、この眠っていたウイルスが、再び目を覚まし、活性化することがあります。潜んでいた神経節から、一本の神経を伝って、皮膚へと移動し、そこで再び増殖を始めるのです。この、ウイルスの「再活性化」によって引き起こされる病気こそが、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」なのです。つまり、水疱瘡と帯状疱疹は、原因となるウイルスは全く同じでありながら、それが「初感染」として現れたのが水疱瘡、「再活性化」として現れたのが帯状疱疹、という関係にあるのです。したがって、過去に水疱瘡にかかったことがある人だけが、帯状疱疹になる可能性を持っています。帯状疱疹の症状は、水疱瘡とは大きく異なります。まず、体の左右どちらか片側の、一本の神経が支配する領域(皮膚分節)に沿って、帯状に、ピリピリ、チクチクとした神経痛のような痛みが現れることから始まります。そして、その数日後、痛みがあった部分に、赤い発疹と、それに続く小さな水ぶくれが、帯状に多数出現します。この水ぶくれは、水疱瘡の時と同様に、強い痛みを伴います。水疱瘡の発疹が全身にバラバラに出現するのに対し、帯状疱疹の発疹は、神経の走行に沿って、体の片側にしか出ないのが、最大の違いです。そして、帯状疱疹で最もつらいのが、皮膚症状が治った後も、数ヶ月から数年にわたって、頑固な神経痛が残ってしまう「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症です。近年では、50歳以上を対象に、この帯状疱疹の発症を予防するためのワクチンも開発されています。これも、水疱瘡と同じウイルスに対する免疫を、再度強化することを目的としたものです。水疱瘡という一度の感染が、数十年後の病気に繋がる。このウイルスのしたたかな生存戦略を知ると、人体の神秘と、感染症の奥深さを感じずにはいられません。
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肋骨・鎖骨・骨盤の骨折、何科で診てもらう?
体の中心部である「体幹」を構成する、肋骨や鎖骨、骨盤の骨折も、比較的よく見られる怪我です。これらの骨折も、基本的には「整形外科」が診療の中心となりますが、骨折の場所や程度によっては、他の臓器への損傷を伴う可能性があり、注意が必要です。まず、「肋骨骨折」は、胸を強くぶつけたり、激しく咳き込んだりすることで起こります。主な症状は、深呼吸や咳、寝返りなどで、胸に響くような鋭い痛みです。多くの場合、骨のズレは少なく、特別な整復は必要ありません。治療は、バストバンドやサラシなどで胸郭を軽く固定し、痛み止めの薬を服用しながら、骨が自然につくのを待つ、保存的治療が基本となります。しかし、肋骨骨折で最も警戒すべきは、折れた骨の先端が、内側にある「肺」や「心臓」、「肝臓」といった重要な臓器を傷つけてしまうことです。特に、肺が損傷して空気が漏れてしまう「気胸」や、肺に出血が起こる「血胸」を合併した場合は、呼吸困難やショック状態に陥る危険性があります。このような内臓損傷を伴う重症の胸部外傷の場合は、整形外科だけでなく、「呼吸器外科」や「胸部外科」の医師による、緊急の処置(胸腔ドレナージなど)が必要となります。次に、「鎖骨骨折」は、転んで肩から落ちたり、手をついたりした際に、子どもから大人まで、幅広い年齢層で起こりやすい骨折です。鎖骨の中央部で折れることが多く、肩の変形や強い痛みを伴います。治療は、多くの場合、専用の固定帯(クラビクルバンド)を用いて、折れた骨を正しい位置に保つ、保存的治療が行われます。ただし、骨のズレが大きい場合や、皮膚を突き破りそうな場合(開放骨折)、あるいは神経や血管の損傷を伴う場合には、手術が必要となることもあります。そして、「骨盤骨折」は、主に交通事故や高所からの転落といった、非常に大きなエネルギーが加わった際に起こる、重篤な骨折です。骨盤は、リング状の構造をしており、その内側には、膀胱や尿道、直腸、そして女性では子宮といった重要な臓器が収められています。そのため、骨盤骨折は、これらの臓器損傷や、骨盤内の大きな血管が破れて、大量出血による出血性ショックを合併する危険性が非常に高いのです。したがって、骨盤骨折の治療は、整形外科医だけでなく、救急医、一般外科医、泌尿器科医などが連携して治療にあたる、集学的治療が必要となります。
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麦粒腫と霰粒腫、似ているようで全く違う二つの「ものもらい」
「ものもらい」と一括りに呼ばれるまぶたのできものには、実は、全く性質の異なる二つの病気、「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」が含まれています。この二つは、初期症状が似ていることもありますが、その原因も治療法も異なるため、正しく見分けることが重要です。まず、これまで述べてきた「麦粒腫」は、黄色ブドウ球菌などによる「細菌感染」が原因で起こる、急性の化膿性炎症です。まぶたの分泌腺や毛根に細菌が感染し、膿が溜まることで、まぶたの縁に、赤み、腫れ、そして「痛み」といった、典型的な炎症のサインが現れます。特に、ズキズキとした痛みが、麦粒腫の最も大きな特徴と言えます。治療には、原因となっている細菌を退治するための「抗生物質」の点眼薬や眼軟膏、内服薬が用いられます。一方、「霰粒腫」は、細菌感染が直接の原因ではありません。これは、まぶたの縁に並んでいる、マイボーム腺という、涙の蒸発を防ぐための脂分を分泌する腺の出口が、何らかの理由で詰まってしまうことで起こる病気です。出口を失った脂分が、腺の中にどんどん溜まっていき、その結果、肉芽腫(にくげしゅ)という、しこりのような塊を形成するのです。これを「非感染性」の慢性的な炎症と捉えることができます。そのため、霰粒腫の主な症状は、まぶたの中にできる、コリコリとした「しこり」であり、通常は、麦粒腫のような強い赤みや「痛み」を伴いません。しかし、この霰粒腫のしこりに、後から細菌が感染してしまうと、「急性霰粒腫」という状態になり、麦粒腫と同じように、赤く腫れて痛むため、見分けがつきにくくなることもあります。霰粒腫の治療は、まず炎症を抑えるためのステロイドの点眼薬や軟膏が用いられます。しこりが大きい場合や、薬で改善しない場合には、しこりに直接ステロイドを注射したり、まぶたの裏側などを小さく切開して、溜まった内容物を掻き出す手術が必要になったりすることもあります。痛ければ麦粒腫、痛くなければ霰粒腫、というのが、大まかな見分け方のポイントです。