マイコプラズマ感染症で、数日間にわたる高熱の時期を乗り越え、ようやく熱が下がった時、患者本人も家族も、ほっと一息つくことでしょう。しかし、解熱した後も、しばらくは注意が必要な期間が続きます。熱が下がったからといって、病気が完全に治癒したわけではないのです。マイコプラズマ感染症の回復期には、いくつかの特徴的な症状が残ることがあります。最も多くの人が経験するのが、「長引く咳」です。熱は下がって、体の倦怠感はなくなったのに、咳だけが、その後2~4週間、あるいはそれ以上にわたって、しつこく続くことがあります。これは、マイコプラズマの感染によって、気道の粘膜が深く傷つき、過敏な状態になっているために起こります。冷たい空気や、ホコリ、会話などの、わずかな刺激でも、咳のスイッチが入ってしまうのです。この回復期の咳に対しては、抗生物質はもはや不要であり、気道の炎症を抑える薬や、咳止め、あるいは気管支拡張薬などが、症状に応じて用いられます。また、マイコプラズマ感染症は、気道過敏性を亢進させることで、「喘息」の発症や、もともと喘息を持っている人の発作を、誘発することがあると知られています。解熱後に、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴が続く場合は、喘息の可能性も考え、呼吸器内科やアレルギー科での精査が必要になることがあります。そして、忘れてはならないのが、ごく稀に起こる「回復期の合併症」です。マイコプラズマ感染から2~4週間ほど経ってから、心臓の筋肉に炎症が起こる「心筋炎」や、脳や脊髄に炎症が及ぶ「脳炎・髄膜炎」、あるいは多形滲出性紅斑といった皮膚症状など、呼吸器以外の合併症が現れることが報告されています。熱が下がって元気になった後に、胸の痛みや、激しい頭痛、意識状態の変化、あるいは原因不明の発疹といった、新たな症状が出現した場合は、マイコプラズマの後期合併症の可能性も念頭に、速やかに医療機関を受診してください。解熱後は、徐々に普段の生活に戻していくことが大切ですが、体力が完全に回復するまでは、無理は禁物です。十分な栄養と休養を心がけ、体の小さな変化にも、注意を払うようにしましょう。
熱が下がった後も注意、マイコプラズマの回復期