処方された抗生物質が、耐性菌でなく、有効なはずなのに、それでも熱が下がらない。このような場合は、マイコプラズマ感染症そのものだけでなく、それに伴う「合併症」が、発熱の原因となっている可能性を考える必要があります。マイコプラズマは、気道に感染し、しつこい咳を引き起こしますが、その炎症が、さらに深刻な状態へと進行することがあります。最も頻度の高い呼吸器系の合併症が、「マイコプラズマ肺炎」の重症化です。マイコプラズマ感染症の約3~10%が肺炎に至るとされていますが、その炎症が広範囲に及んだり、胸水(肺と胸壁の間に水がたまる)を伴ったりすると、発熱も長引き、呼吸状態が悪化します。咳がさらにひどくなり、息苦しさや胸の痛みといった症状が現れた場合は、肺炎が悪化しているサインです。また、気道の炎症によって、粘膜のバリア機能が低下すると、そこに別の細菌が二次的に感染しやすくなります。その代表が、「細菌性肺炎」の合併です。肺炎球菌やインフルエンザ菌といった、普段は喉でおとなしくしている細菌が、肺に侵入して、新たな肺炎を引き起こすのです。この場合、咳と共に、黄色や緑色の膿のような痰が出るようになるのが特徴です。呼吸器以外で、特に子どもに多い合併症が「急性中耳炎」です。マイコプラズマ感染によって、鼻や喉の炎症が、耳管という、喉と耳をつなぐ管を介して、中耳にまで波及します。急に耳の痛みを訴えたり、機嫌が悪くなったり、耳だれが出たりした場合は、中耳炎を合併している可能性があります。その他、「副鼻腔炎(蓄膿症)」も、比較的よく見られる合併症です。鼻づまりや、色のついた粘り気のある鼻水、頭痛などが主な症状です。これらの合併症を発症している場合、マイコプラズマに対する抗生物質だけでは不十分で、それぞれの病態に応じた追加の治療が必要となります。例えば、細菌性肺炎や中耳炎を合併していれば、その原因菌をターゲットとした、別の種類の抗生物質が必要になるかもしれません。熱が下がらず、咳以外の新たな症状(胸痛、耳痛、頭痛など)が現れた場合は、合併症を疑い、必ず再受診して、医師に詳しく診察してもらうことが重要です。