水疱瘡は、かつては「誰もが子どもの頃にかかる病気」とされていましたが、現在では、ワクチンで予防できる病気(VPD: Vaccine Preventable Diseases)の一つとなっています。水疱瘡ワクチンの定期接種化によって、その流行は劇的に減少し、重症化する子どもも少なくなりました。このワクチンの効果と重要性を、正しく理解しておくことが大切です。水疱瘡ワクチンは、病原体である「水痘・帯状疱疹ウイルス」の毒性を、極限まで弱めて作られた「生ワクチン」です。これを接種することで、実際に水疱瘡にかかったのと近い形で、体に免疫(抵抗力)をつけさせることができます。現在、日本では、1歳から3歳になるまでの子どもを対象に、2回の定期接種が行われています。1回目の接種は1歳になったらなるべく早く、2回目の接種は、1回目から3ヶ月以上の間隔をあけて(標準的には6ヶ月から12ヶ月の間隔をあけて)行います。なぜ、2回の接種が必要なのでしょうか。1回の接種でも、約90%以上の人が、水疱瘡の発症を予防できる、あるいは、かかってもごく軽い症状で済むだけの免疫を獲得できます。しかし、ごく一部の人では、1回の接種だけでは、十分な免疫がつかないことがあります(primary vaccine failure)。また、一度ついた免疫も、時間と共に少しずつ低下していくことがあります。そこで、2回目の接種を行うことで、免疫をより確実で、強固なものにし、長期にわたって高い予防効果を維持することができるのです。2回接種を完了した場合、重症の水疱瘡にかかるリスクは、ほぼ100%防ぐことができるとされています。また、たとえワクチン接種後に水疱瘡にかかってしまった場合(ブレークスルー水痘)でも、その症状は、未接種者に比べて、発疹の数が圧倒的に少なく、発熱もほとんど見られないなど、非常に軽く済むことがほとんどです。さらに、ワクチン接種は、個人の感染予防だけでなく、「集団免疫」という、社会全体を感染症から守る上でも、非常に重要な役割を果たします。多くの人がワクチンを接種することで、ウイルスが流行しにくい環境を作り、ワクチンを接種できない赤ちゃんや、免疫力が低下している人々を、間接的に感染から守ることに繋がるのです。
水疱瘡の予防接種、その効果と重要性