いぼ痔(痔核)と診断されたからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。実際、いぼ痔の治療の基本は「保存的治療」であり、多くの場合は手術をせずに症状を改善させることができます。しかし、症状が進行してしまった場合や、保存的治療では効果が見られない場合には、手術が選択肢となります。ここでは、いぼ痔の治療法の種類と、どのような場合に手術が必要になるのかを解説します。まず、治療の第一歩となるのが「生活習慣の改善」です。便秘や下痢は肛門に大きな負担をかけるため、食物繊維と水分を十分に摂取し、規則正しい排便習慣を身につけることが基本中の基本となります。長時間の座りっぱなしや立ちっぱなしを避け、適度な運動を心がけることも血行促進に繋がり、症状の緩和に役立ちます。次に、生活習慣の改善と並行して行われるのが「薬物療法」です。炎症や腫れを抑えるステロイドや、痛みを和らげる局所麻酔薬などが配合された軟膏や座薬が用いられます。また、便を柔らかくして排便をスムーズにするための内服薬が処方されることもあります。初期のいぼ痔であれば、これらの保存的治療を数週間続けるだけで、症状はかなり改善することが期待できます。では、どのような場合に手術が検討されるのでしょうか。一般的に、手術が必要となるのは、いぼ痔の進行度分類で「Ⅲ度」や「Ⅳ度」と診断されたケースです。これは、排便時にいぼ痔が肛門の外に脱出し(脱肛)、指で押し込まないと戻らない状態(Ⅲ度)や、指で押しても戻らず、常に出たままになってしまっている状態(Ⅳ度)を指します。このような状態になると、日常生活に大きな支障をきたし、痛みや出血もひどくなる傾向があります。また、脱出した痔核が肛門で締め付けられ、激しい痛みを伴って腫れ上がる「嵌頓(かんとん)痔核」という状態になった場合も、緊急手術が必要となることがあります。手術方法には、従来から行われている「結紮切除術」のほか、近年ではALTA療法(ジオン注射)と呼ばれる、痔核に薬を注射して硬化・縮小させる切らない治療法も広く行われるようになっています。どの治療法が最適かは、痔の種類や大きさ、患者さんのライフスタイルなどを総合的に判断して決定されます。まずは専門医に相談し、自分の症状がどの段階にあるのかを正確に把握することが重要です。