ペンで字を書こうとした時、コップを持った時、人前に立った時など、ふとした瞬間に自分の手が意図せず震えていることに気づくと、誰でも不安になるものです。「何か悪い病気なのではないか」と心配になりつつも、「この症状は一体何科に相談すればいいのだろう?」と迷ってしまう方は少なくありません。手の震え(振戦)は、様々な原因によって引き起こされるため、原因に応じた適切な診療科を選ぶことが重要です。まず、手の震えで最も多くの人が最初に受診を検討すべき診療科は「神経内科」です。神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、筋肉といった、体の動きをコントロールする神経システム全般の病気を専門とします。パーキンソン病、本態性振戦、甲状腺機能亢進症に伴う震えなど、震えを主症状とする多くの疾患の診断と治療を行います。特に、安静にしている時に震えが強く出る、動作が遅くなる、歩きにくさを感じるといった症状が伴う場合は、パーキンソン病の可能性も考えられるため、神経内科の受診が強く推奨されます。次に考えられるのが「脳神経外科」です。震えの原因が脳腫瘍や、脳の血管障害、頭部の外傷後遺症など、外科的な治療が必要な病気であると疑われる場合に選択肢となります。激しい頭痛やめまい、意識障害などを伴う場合は、脳神経外科への受診を急ぐ必要があります。また、動悸、多汗、体重減少、眼球突出といった症状と共に手が震える場合は、「内分泌内科」や「一般内科」が適しています。これは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の代表的な症状だからです。血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べることで診断がつきます。さらに、特定の状況下でのみ震えが強くなる場合は「精神科」や「心療内科」が専門となります。例えば、人前でスピーチをする時や、試験を受ける時など、強いストレスや緊張、不安を感じる場面で震えが悪化するのは、精神的な要因が関与している可能性があります。これは生理的な反応の範疇であることも多いですが、社会生活に支障をきたすほどであれば、治療の対象となります。どの診療科に行くべきか判断に迷う場合は、まずはかかりつけの内科医に相談し、症状を詳しく説明した上で、適切な専門科を紹介してもらうのが最も確実な方法です。自己判断で様子を見るのではなく、専門医に相談することが、不安解消への第一歩となります。
手が震えるのは何科?考えられる原因と正しい診療科選び