「父親も痔で悩んでいたから、自分もなるのは仕方ないのかもしれない」いぼ痔に悩む方から、こうした声を聞くことがあります。果たして、いぼ痔は本当に遺伝するのでしょうか。結論から言うと、いぼ痔そのものが遺伝子によって直接的に伝わるという医学的な証拠はありません。つまり、親がいぼ痔だからといって、その子供が必ずいぼ痔になるわけではないのです。しかし、親子で同じようにいぼ痔に悩むケースが多いのも事実です。これには、遺伝ではなく「生活習慣の類似」と「体質的な要因」が大きく関わっていると考えられます。まず、生活習慣の類似についてです。家族は同じような食生活を送ることが多いため、例えば食物繊維が少なく、脂肪分が多い食事を好む家庭では、親子そろって便秘になりやすい傾向があります。便秘は、いぼ痔の最大の誘因です。また、運動をあまりしない、トイレに長くこもる、といった生活スタイルも、家庭内で無意識のうちに似てくることがあります。これらの痔のリスクを高める生活習慣が、親子間で共有されることで、結果的に「痔の家系」のように見えてしまうのです。次に、体質的な要因です。これは遺伝と少し似ていますが、病気そのものではなく、病気になりやすい「体のつくり」が受け継がれる可能性を指します。例えば、血管壁や肛門周辺の組織が、生まれつき少し弱いといった体質が考えられます。このような体質の人が、便秘や長時間の座り仕事といった肛門に負担のかかる生活を送ると、そうでない人に比べていぼ痔を発症しやすくなる可能性があります。しかし、これもあくまで「なりやすい」というだけであり、必ずなるわけではありません。いぼ痔の主な原因は、遺伝や体質といった先天的なものよりも、後天的な生活習慣にあると言えます。具体的には、便秘や下痢、長時間の座りっぱなし・立ちっぱなしによる肛門部のうっ血、妊娠・出産による腹圧の上昇、アルコールや香辛料などの過剰摂取による刺激などが、直接的な引き金となります。つまり、たとえ家族にいぼ痔の人がいたとしても、日々の生活習慣に気をつけることで、発症のリスクを大幅に減らすことは十分に可能です。遺伝のせいだと諦めるのではなく、まずは自分の生活を見直し、予防に努めることが何よりも大切なのです。
いぼ痔は遺伝する?気になる原因とリスク要因を解説