骨折治療の主役となる「整形外科」。この診療科では、骨折に対して、どのようなアプローチで診断と治療が進められていくのでしょうか。まず、患者さんが「痛い、腫れている」と訴えて来院すると、医師は「問診」から診察を始めます。いつ、どこで、どのようにして怪我をしたのか、という受傷機転を詳しく聞き取ることは、骨折の有無や種類を推測する上で、非常に重要な情報となります。次に、「視診」と「触診」です。患部の腫れや変形、皮膚の色の変化などを目で見て確認し、痛みの最も強い場所(圧痛点)や、骨が異常に動く感じ(異常可動性)、骨がきしむ音(軋轢音)などを、手で触れて慎重に確かめます。そして、診断を確定させるために、最も重要な検査である「レントゲン(X線)撮影」が行われます。通常、2方向以上(正面と側面など)から撮影することで、骨の連続性が途絶えている「骨折線」や、骨のズレ(転位)の程度を、客観的に評価します。レントゲンだけでは判断が難しい、微細な骨折(不全骨折)や、関節内の複雑な骨折の場合は、さらに詳しく調べるために、「CT検査」や「MRI検査」が追加されることもあります。診断が確定すると、治療方針が決定されます。骨折治療の基本原則は、折れた骨を元の正しい位置に戻し(整復)、それが再びずれないように固定し(固定)、骨が癒合するのを待つ、というものです。骨のズレが少ない場合は、手術をしない「保存的治療」が選択されます。ギプスやシーネ、あるいは装具を用いて、骨がつくまでの数週間から数ヶ月間、患部を固定します。一方、骨のズレが大きい場合や、関節内の骨折、あるいは早期の社会復帰が望まれる場合には、手術的な治療が選択されます。手術では、金属製のプレートやスクリュー、釘(髄内釘)などを用いて、折れた骨を内側から強固に固定します(内固定)。手術のメリットは、より正確な整復が可能であることと、強固な固定によって、ギプス固定が不要になったり、早期からリハビリテーションを開始できたりする点にあります。そして、骨がある程度ついた後、治療の総仕上げとして重要になるのが、「リハビリテーション」です。長期間の固定によって硬くなった関節の動き(可動域)を回復させ、弱くなった筋力を取り戻すための運動療法を、理学療法士の指導のもとで行います。
整形外科の役割、骨折の診断から治療、リハビリまで