ものもらい、特に麦粒腫ができた時、多くの人が心配することの一つに、「この病気は、他の人にうつるのだろうか?」という点があります。特に、小さなお子さんがいる家庭や、学校、職場など、集団生活を送る上では、気になる問題でしょう。結論から言うと、麦粒腫は、人に「うつらない」病気です。したがって、麦粒腫ができたからといって、インフルエンザや、はやり目(流行性角結膜炎)のように、学校や保育園、幼稚園を休む必要はありません。学校保健安全法においても、麦粒腫は出席停止が定められた感染症には分類されていません。同様に、大人の場合も、仕事を休む法的な義務はありません。では、なぜ、麦粒腫はうつらないのでしょうか。それは、麦粒腫の原因が、私たちの皮膚や鼻の中に普段から存在する「常在菌(主に黄色ブドウ球菌)」による、日和見感染だからです。つまり、外部から特殊な病原体が侵入して発症するのではなく、自分の体にもともといる菌が、体の抵抗力が落ちた時などに、たまたま増殖して炎症を起こしている状態なのです。その菌が、空気感染や飛沫感染で、他人に感染して、同じように麦粒腫を引き起こす、ということは、まず考えられません。また、ものもらいという俗称から、「人からものをもらうとできる」という迷信が生まれたり、あるいは地域によっては「めばちこ」「めいぼ」といった呼び名と共に、「見たらうつる」というような、誤った言い伝えが残っていたりすることも、混乱の原因となっているかもしれません。しかし、これらは全て、医学的な根拠のない迷信です。ただし、麦粒腫はうつらないとはいえ、一つ注意すべき点があります。それは、膿が破れて出てきた場合です。この膿の中には、原因となっている黄色ブドウ球菌が大量に含まれています。もし、膿に触れた手で、タオルや枕などを共有してしまうと、そのタオルを介して、他の人の目に菌が運ばれてしまう可能性は、ゼロではありません。その人が、たまたま目の周りに傷があったり、抵抗力が落ちていたりすれば、そこから感染を起こすリスクは考えられます。したがって、家庭内では、タオルの共用を避ける、といった、基本的な衛生管理を心がけるのが賢明です。
麦粒腫はうつる?登園・登校や仕事への影響