皮膚に現れる、赤い膨らみとかゆみ。私たちは、ついそれらを全て「蕁麻疹」と一括りにしてしまいがちです。しかし、皮膚の世界は奥深く、蕁麻疹と非常によく似た見た目をしていながら、その原因や治療法が全く異なる、様々な病気が存在します。特に、発熱を伴う場合は、これらの「蕁麻疹に似て非なる病気」の可能性も、視野に入れておくことが重要です。その代表格が、「多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)」です。この病気は、まるで射撃の的のように、中心がくぼんだ、円形の赤い発疹(ターゲット状皮疹)が、手や足、腕などに、左右対称に現れるのが特徴です。一つ一つの発疹は、蕁麻疹のように数時間で消えることはなく、一週間から二週間程度、同じ場所に留まります。ウイルス感染や薬剤アレルギーが引き金となることが多く、発熱や倦怠感、関節痛といった全身症状を伴うこともあります。次に、「結節性紅斑(けっせつせいこうはん)」も、見分けるべき病気の一つです。これは、主に、すね(下腿伸側)に、痛みを伴う、赤く硬いしこり(結節)が、複数現れる病気です。見た目は、打撲の跡のようにも見えます。溶連菌感染症や、サルコイドーシスといった、全身の病気の一症状として現れることがあり、発熱や関節痛を伴うのが一般的です。蕁麻疹のような、強いかゆみはあまりありません。また、「蕁麻疹様血管炎(じんましんようけっかんえん)」という、より専門的な病気もあります。これは、見た目は蕁麻疹とそっくりですが、一つ一つの皮疹が二十四時間以上消えずに持続し、消えた後に、紫色の跡(紫斑)や、茶色い色素沈着を残すのが特徴です。皮膚の細い血管に炎症が起きる「血管炎」の一種であり、膠原病などの全身疾患と関連している可能性があるため、専門的な検査が必要となります。これらの病気は、いずれも皮膚科医でなければ、正確な診断は困難です。もし、あなたの皮疹が、「数時間で消えては、また別の場所に現れる」という、蕁麻疹の典型的な特徴に当てはまらない場合、あるいは、消えた後に跡が残る場合は、それは単なる蕁麻疹ではないかもしれません。自己判断せず、専門医の診察を受けることが、正しい治療への、唯一の道筋となるのです。
それ蕁麻疹じゃないかも?似ている病気