高熱と咳が続く場合、その原因が必ずしもマイコプラズマ感染症であるとは限りません。特に、治療を行っても熱が下がらない場合は、「そもそも診断が違うのではないか?」という視点を持つことも重要です。医師は、常に他の様々な発熱性疾患の可能性を念頭に置きながら、鑑別診断を進めています。マイコプラズマと症状が似ており、鑑別が必要となる代表的な病気をいくつか紹介します。まず、冬場であれば、最も鑑別すべきは「インフルエンザ」です。インフルエンザは、突然の高熱と、強い悪寒、頭痛、筋肉痛・関節痛といった、激しい全身症状で発症するのが特徴です。マイコプラズマも高熱や倦怠感を伴いますが、インフルエンザほどの急激で激烈な全身症状は、比較的少ないとされています。次に、同じく非定型肺炎の原因となる「クラミジア肺炎」や、近年注目されている「ヒトメタニューモウイルス感染症」も、マイコプラズマと症状が酷似しており、臨床症状だけで見分けるのは非常に困難です。また、子どもの間で流行する「アデノウイルス感染症(プール熱)」は、高熱と、喉が真っ赤に腫れる強い咽頭炎、そして目の充血(結膜炎)を三主徴とします。目の症状が、鑑別の大きなポイントとなります。細菌感染症としては、「百日咳」も、特に初期は風邪様の症状から始まり、発熱を伴うことがあります。その後、特徴的な発作性の激しい咳(痙咳)に移行していきます。そして、最も注意深く鑑別しなければならないのが、肺炎球菌などによる「細菌性肺炎」です。細菌性肺炎は、マイコプラズマの乾いた咳とは対照的に、黄色や緑色の膿のような痰を伴うことが多く、胸の痛みを訴えることもあります。重症化しやすいため、早期の抗生物質治療が不可欠です。さらに、稀ではありますが、「川崎病」も、高熱と咳で発症することがあります。川崎病は、5日以上続く発熱に加え、目の充血や、いちご舌、首のリンパ節の腫れ、不定形の発疹といった、特徴的な他の症状を伴います。これらの病気は、それぞれ治療法が全く異なります。熱が下がらない場合は、これらの他の病気の可能性も考え、血液検査や、各種の迅速検査、レントゲン撮影など、追加の検査を行い、原因を再評価することが、正しい治療へと繋がるのです。
マイコプラズマと他の発熱性疾患との鑑別