ここでは、これまでの内容を総括し、「骨折」が疑われる際に、どのように考え、どの診療科を目指すべきかの行動指針を、シンプルに整理します。大原則:骨折が疑われる場合の第一選択は、常に「整形外科」です。整形外科は、骨・関節の診断と治療のスペシャリストであり、ほとんどの骨折に対応できる、最も信頼性の高い窓口です。迷ったら、まずは整形外科を目指すのが、最も確実で安全な選択と言えます。ただし、状況に応じて、より適切な専門科が存在することも事実です。そのための思考プロセスを、以下に示します。Step 1:怪我をした場所と、伴う症状で、緊急性を判断する。①頭を強く打ったか? → 意識がおかしい、吐き気がする、けいれんしている。このような場合は、脳へのダメージが最優先事項です。ためらわずに救急車を呼び、「脳神経外科」のある病院へ向かう必要があります。②顔を強く打ったか? → 鼻血が止まらない、物が二重に見える、噛み合わせがおかしい。このような場合は、顔面の機能と見た目の回復を専門とする「形成外科」や「歯科口腔外科」がより適しています。③胸や骨盤を強く打ったか? → 呼吸が苦しい、お腹が痛い。このような場合は、肺や内臓の損傷を伴う可能性があり、救急外来での総合的な評価が必要です。**Step 2:緊急性はないが、四肢(手足)の骨折が疑われる場合。**これは、整形外科の最も得意とする領域です。「腕や足が、明らかに変な方向に曲がっている(変形)」「関節ではない場所が、ぐらぐら動く(異常可動性)」「強い痛みと腫れで、全く動かせない」。これらのサインがあれば、骨折の可能性は非常に高いです。夜間や休日であっても、整形外科医のいる救急病院を受診しましょう。**Step 3:子どもの骨折が疑われる場合。**子どもは、痛みをうまく表現できなかったり、レントゲンでは分かりにくい特殊な骨折をしていたりすることがあります。可能であれば、「小児整形外科」を標榜している専門医の診察を受けるのが最も理想的です。骨折の治療は、初期対応がその後の回復を大きく左右します。自己判断で「ただの打撲だろう」と放置してしまうと、骨がずれたまま固まってしまったり、関節の動きが悪くなったりする原因となります。痛みや腫れが強い場合は、ためらわずに、まずは整形外科の扉を叩いてください。