転んで手をついた、スポーツ中に強く体をひねった、あるいは交通事故に遭った。このような強い外力が体に加わった後、特定の場所に激しい痛みや腫れ、変形が現れた時、誰もが「もしかして骨が折れたのではないか?」と不安になるでしょう。骨折は、日常生活の中に潜む、決して稀ではない怪我です。そして、骨折を疑った際に、迅速かつ適切に受診すべき診療科は、骨・関節・筋肉といった「運動器」の専門家である「整形外科」です。整形外科は、骨折の診断から治療、そしてその後のリハビリテーションまでを、一貫して専門的に行う、まさに骨折治療の中心的な役割を担う診療科です。骨折の診断には、まず「レントゲン(X線)撮影」が不可欠であり、ほとんどの整形外科クリニックや病院には、この設備が整っています。レントゲンで骨の状態を詳しく見ることで、骨が折れているか、折れている場合はどのように折れているか(骨折のタイプ)、そして骨の位置がずれているか(転位)などを、正確に診断することができます。しかし、骨折した部位や、伴う症状によっては、整形外科以外の科が関わってくることもあります。例えば、頭を強く打って、頭蓋骨骨折や脳へのダメージが疑われる場合は、「脳神経外科」での緊急対応が必要です。また、顔の骨(鼻骨、頬骨、顎骨など)を骨折した場合は、顔面の機能と整容(見た目)の両方を専門とする「形成外科」や、噛み合わせの問題が関わる場合は「歯科口腔外科」が、治療を担当することもあります。この記事シリーズでは、骨折の基本的な知識から、部位別の特徴、そして適切な診療科の選び方までを詳しく解説し、万が一の際に、あなたが冷静で的確な行動をとるための手助けをします。