大人になってから、仕事でのケアレスミスが異常に多かったり、会議中に集中力が切れてしまったり、あるいは感情のコントロールが難しく衝動的に行動してしまったりすることに悩み、自分はADHD(注意欠如・多動症)ではないかと考え始める人が増えています。かつては子どもの病気と考えられていたADHDですが、現代では大人になってもその特性を持ち続け、社会生活に困難を抱える「大人のADHD」という概念が広く認知されるようになりました。では、いざ自分がその可能性を疑ったとき、一体どこの診療科へ行けばよいのでしょうか。結論から言えば、最も適切なのは精神科、あるいは心療内科です。ADHDは脳の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの働きが偏っていることに起因する発達障害の一種であり、その診断と治療は精神医学の専門領域に属します。精神科と心療内科のどちらを選ぶべきかという点については、基本的には「大人の発達障害」を専門に掲げている、あるいは診療内容に含まれているクリニックであればどちらでも構いません。しかし、より厳密に言えば、ADHDそのものの診断や薬物療法を主目的とするならば、精神科の方がより専門的な対応を期待できる場合が多いです。一方、ADHDの特性ゆえに周囲から叱責を受け続け、それによって抑うつ状態や不眠といった心身の不調(二次障害)が出ている場合には、心療内科が適していることもあります。受診先を探す際の重要なポイントは、その病院のホームページ等で「大人の発達障害」に対応しているかを確認することです。精神科や心療内科の中には、高齢者の認知症や統合失調症、あるいは依存症などを中心に診ているところもあり、すべてのメンタルクリニックが発達障害の精密な検査を行っているわけではないからです。最近では「発達障害外来」という専門の窓口を設けている総合病院や大学病院も増えており、より精度の高い知能検査や心理検査を希望する場合は、こうした専門性の高い機関を検討するのも一つの手です。病院で行われる診断プロセスは、単なる問診だけでなく、幼少期の通知表や親からの聞き取り、複数の心理検査などを通じて、その特性が子どもの頃から継続しているのか、他の精神疾患ではないのかを慎重に見極める作業となります。ADHDは「本人の努力不足」や「性格の問題」ではなく、脳の特性によるものです。適切な診療科で受診し、自分の脳がどのような癖を持っているのかを客観的に知ることは、これからの人生における戦略を立てる上で極めて重要です。病院へ行くことは、自分を否定するためではなく、より自分らしく楽に生きるための第一歩なのです。
大人の不注意や衝動性は病気か?受診すべき診療科の正解