糖尿病の診断を下すためには、血液や尿に含まれる糖の量を、客観的な数値で評価する必要があります。医療機関を受診すると、まず問診で自覚症状や家族歴、生活習慣などを詳しく聞き取った後、診断の根拠となる、いくつかの基本的な検査が行われます。まず、最も基本となるのが「血液検査」です。ここで調べる重要な項目が二つあります。一つは、「血糖値」です。これは、採血した時点での、血液中のブドウ糖の濃度を直接測定するものです。食事の影響を避けるために、通常は朝食前の空腹時に測定する「空腹時血糖値」が基準となります。もう一つ、さらに重要なのが「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」です。これは、赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質が、血液中のブドウ糖と、どのくらいの割合で結合しているかを示す指標です。血糖値が、その瞬間の値を捉える「点」の検査であるのに対し、ヘモグロビンA1cは、過去1~2ヶ月間の血糖値の平均的な状態を反映する「線」の検査と言えます。これにより、一時的な血糖値の変動に惑わされることなく、普段の血糖コントロールの状態を正確に把握することができます。次に、「尿検査」です。健康診断でもおなじみの「尿糖」の検査ですが、これは、血糖値が一定のレベル(通常は160~180mg/dL)を超えると、腎臓で糖を再吸収しきれなくなり、尿の中に糖が漏れ出てくる現象を捉えるものです。尿糖が陽性であることは、高血糖状態を示唆する重要な手がかりとなります。これらの「空腹時血糖値」「ヘモグロビンA1c」そして「尿糖」の検査結果を、日本糖尿病学会が定める診断基準に照らし合わせて、診断が下されます。一度の検査だけでは判断がつかない、糖尿病との境界線上にいる「境界型(予備群)」が疑われる場合には、さらに詳しく調べるために、「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」という精密検査が行われることもあります。これは、空腹時にブドウ糖の入った甘い液体を飲み、その後の血糖値の変動を時間ごとに測定することで、インスリンの分泌能力や働きを、より詳細に評価する検査です。
病院で行われる糖尿病の基本的な検査とは