高熱と、手足の激しい痛み、そして口内炎。あまりのつらさに、病院に駆け込んだものの、医師から「この病気に、特効薬はありません」と告げられたら、多くの人は絶望的な気持ちになるかもしれません。しかし、これは決して、医師が治療を放棄しているわけではありません。手足口病の原因はウイルスであるため、細菌感染症に対する抗生物質のように、ウイルスそのものを直接攻撃して殺すための、特異的な「抗ウイルス薬」が、現在のところ存在しない、というのが医学的な事実なのです。では、病院では一体どのような治療が行われるのでしょうか。手足口病の治療の基本は、薬で病気の原因を治す「原因療法」ではなく、出現しているつらい症状を和らげ、体がウイルスと戦って自然に回復するのを助ける「対症療法」が中心となります。まず、高熱や、手足の発疹に伴う強い痛みに対しては、「解熱鎮痛剤」が処方されます。アセトアミノフェンや、イブプロフェンといった、市販の風邪薬にも含まれている成分の薬を服用することで、熱を下げ、痛みを和らげることができます。次に、口の中にできた、痛みを伴う多数の口内炎に対しては、粘膜の炎症を抑え、痛みを緩和するための「うがい薬」や、直接患部に塗る「軟膏」が処方されることがあります。また、皮膚の発疹に伴う強いかゆみがある場合には、アレルギー反応を抑える「抗ヒスタミン薬」の内服薬や、塗り薬が処方されることもあります。そして、医師が最も重要視するのが、「脱水症状」の予防です。口の中の痛みで、食事や水分が十分に摂れない状態が続くと、脱水症状に陥り、全身状態が悪化してしまう危険性があります。そのため、特に水分摂取が困難な場合は、病院で「点滴」による水分と栄養の補給が行われることもあります。このように、病院での治療は、ウイルスが自然にいなくなるまでの間、患者さんができるだけ快適に、そして安全に過ごせるように、様々な角度からサポートすることに主眼が置かれています。特効薬はない、という言葉に落胆せず、医師の指導のもと、一つ一つのつらい症状と向き合っていくことが、回復への最も確実な道筋となるのです。
大人の手足口病に特効薬はない?病院での治療