あれは去年の夏のこと、お風呂で体を洗っている時に、右足の付け根のあたりに、これまでにはなかった妙な盛り上がりがあることに気づきました。指で押してみると柔らかく、痛みはありません。しかし、立ち上がったまま鏡で見ると、そこだけがポコッと膨らんでいて、どこか不気味な違和感を覚えました。最初は「脂肪の塊だろうか、それとも何か悪い病気のしこりだろうか」と、最悪の事態ばかりが頭をよぎり、食事も喉を通らないほどの不安に襲われました。インターネットで「股関節、しこり、柔らかい」と検索すると、真っ先に出てきた言葉が鼠径ヘルニアでした。さらに調べると「何科に行けばいいのか」という議論が多く、私はまず近所の総合病院の一般外科を予約することにしました。外科と聞くと、大怪我をした人や大きな手術を受ける人が行く場所というイメージがあり、自分のような「痛みもないしこり」だけで行っていいのかという迷いもありましたが、結果的にこの判断が私を救ってくれました。病院の待合室で緊張しながら待っていると、名前を呼ばれて診察室に入りました。先生は私の話を丁寧に聞いた後、実際にその場所を触り、「少し力を入れてみてください」と仰いました。私が咳をするように腹圧をかけると、そのしこりはよりはっきりと手の下で膨らみました。先生は穏やかな声で「これは典型的な鼠径ヘルニアですね。お腹の壁に小さな穴が開いて、そこから腸が出てきているんです」と診断してくれました。癌のような悪い病気ではないと分かった瞬間の安堵感は、今でも忘れられません。しかし、先生からは「残念ながらこの穴は自然に塞がることはありません。将来的に腸が詰まって動けなくなるリスクがあるから、今のうちに手術で治しておきましょう」というアドバイスがありました。手術と聞いて一瞬足がすくみましたが、このまま爆弾を抱えて生活するよりは、専門家の手で綺麗に治してもらいたいと思い、手術を決意しました。私が選んだのは、三日間の入院で行う腹腔鏡手術でした。お腹に小さな穴を三箇所開けるだけで、内側から人工のメッシュで補強するという最新の手法です。術後は少し筋肉痛のような痛みがありましたが、退院する頃にはあんなに気になっていた鼠径部の膨らみは完全に消失し、肌は元の平らな状態に戻っていました。今、振り返って思うのは、病院の何科に行こうか迷って一人で悩んでいた時間が一番辛かったということです。もし、あの時「ただの疲れだろう」と放置していたら、いつか旅先や仕事中に激痛で倒れていたかもしれません。外科の先生に相談し、科学的な根拠に基づいて対処してもらったことで、私は身体の自由だけでなく、心の平穏も取り戻すことができました。同じようなしこりに気づいた方がいれば、怖がらずに、まずは一般外科や消化器外科の扉を叩いてみてください。そこには、あなたの不安を確信に変え、健やかな未来へと導いてくれるプロフェッショナルが必ず待っています。
股関節のしこりに驚き外科を訪ねた私の闘病体験記