私が自分の身体の臭いに初めて違和感を覚えたのは、中学二年生の夏のことでした。体育の授業が終わった後、着替えている最中にふと漂ってきた、これまでに嗅いだことのないようなツンとした刺激的な臭い。それが自分の脇から発せられていることに気づいた瞬間、目の前が真っ暗になるような衝撃を受けたのを今でも鮮明に覚えています。それからは、毎日が不安との戦いでした。友達から臭いと思われていないか、廊下ですれ違う人が鼻をすすっただけで自分のせいではないかと疑心暗鬼になり、制服の脇の部分を何度も確認する日々が続きました。そんな私を見かねた母が、ある日そっと教えてくれたのが、私のこの体質は「お父さんからの遺伝だよ」という事実でした。実は、私の父も若い頃からワキガで悩んでおり、手術を受けて克服した経験があったのです。母からその話を聞いたとき、悲しいという気持ちよりも、どこかホッとしたのを覚えています。自分が不潔だからではなく、親から受け継いだ体質の一部なのだと理解できたからです。医学的にも、ワキガは高い確率で遺伝することが証明されています。片方の親がワキガ体質であれば約五十パーセント、両親ともにそうであれば約八十パーセントという非常に高い確率で子供に引き継がれます。これは「優性遺伝」という仕組みによるもので、アポクリン腺の多さや活動の活発さが遺伝子によって決定されているのです。私の場合、父からの遺伝であることを知ってから、自分を責めるのをやめました。それよりも、この体質とどう付き合っていくかを前向きに考えるようになったのです。父は自分の経験から、効果的なデオドラント剤の選び方や、食生活での注意点を丁寧に教えてくれました。遺伝だからといって諦める必要はなく、むしろ原因がはっきりしているからこそ、対策も明確になります。もちろん、思春期特有の繊細な時期に、自分の身体を百パーセント受け入れるのは簡単ではありませんでした。それでも、家族という一番身近な理解者が同じ悩みを共有してくれたことは、私の精神的な支えとなりました。ワキガという体質は、ある意味で家族の繋がりを示す印のようなものかもしれません。今は、適切なケアを行いながら、この個性とも言える体質と共に生きています。遺伝という抗えない原因があるからこそ、私たちは最新の医学や正しいケアの知識を学び、自分自身の身体を慈しむ術を身につけることができるのだと信じています。同じように悩んでいる若い世代の人たちには、それはあなたが悪いわけではなく、生命が受け継いできた長い歴史の一コマに過ぎないのだと伝えたいです。