日々の診察の中で、生理が来ないことを理由に受診される患者様は非常に多いですが、その多くの方が「もっと早く来ればよかった」あるいは「まだ受診するには早すぎたのではないか」という迷いを抱えていらっしゃいます。医師の立場から明確な指針を提示させていただけるならば、受診を検討すべき第一のタイミングは「生理が予定日から一週間以上遅れた時」です。この時点での受診が重要なのは、何よりもまず妊娠の有無を確定させる必要があるからです。妊娠は病気ではありませんが、初期の適切な管理がその後の経過を左右します。また、子宮外妊娠のような緊急を要する異常も、この時期の診察で早期に発見することが可能です。もし、ご自身で検査薬を使用して陰性だったとしても、生理が来ないという事実は、排卵が遅れているか、あるいは起きていないという身体の異変を示しています。次に、妊娠の可能性がない方であっても、受診を強く推奨するのは「これまでの自分の周期から数えて二週間以上遅れた時」です。一、二週間の遅れであれば、風邪を引いた、試験があった、引っ越しをしたといった日常的なストレスで説明がつくこともありますが、二週間を超えてくると、ホルモンの司令塔である視床下部や下垂体の機能が一時的に低下している疑いが強まります。そして、最も見過ごしてはいけないのが「三ヶ月ルール」です。三ヶ月生理が来ない状態を放置すると、子宮内膜が長期間剥がれ落ちないことで増殖症のリスクが高まったり、卵巣が休眠状態に入ってしまい、再び動かすために強力なホルモン剤が必要になったりします。私たちは診察において、まず問診で生活背景を伺い、経膣エコーで子宮内膜の厚さや卵巣の中の卵胞の発育状況を診ます。これにより、もうすぐ生理が来そうな状態なのか、それとも当分来そうにないのかが概ね分かります。その後、必要に応じて採血を行い、エストロゲン、プロゲステロン、さらにはLHやFSHといった数値を確認します。生理不順の治療は、単に生理を起こせば良いというものではありません。その背景にある原因、例えば急激な体重減少による飢餓状態の認識や、仕事のストレス、あるいは甲状腺疾患などを特定し、根本からアプローチすることが本来の目的です。病院は、何か重大な事態になってから行く場所ではなく、重大な事態になるのを防ぐために行く場所です。生理がこないという些細な変化をきっかけに、自分の健康管理のパートナーとして婦人科を活用していただきたい。そのための扉は、いつでも開かれています。
産婦人科医に聞く生理が遅れた時の適切な相談時期